民事信託は必要ですか?
民事信託は必要ですか?

□ 古くからあった民事信託の仕組み


信託法は大正11年からある法律です。
現在の信託法は84年ほどの時を経て平成19年9月30日に改正されました。
信託法が新しくなってからそれほど年月は経っていませんが古くから民事信託という手法は存在していました。
ではどうして民事信託が近年注目されるのでしょうか?


□ 改正された信託法とその背景


大正の時代からある信託法は、平成の時代と比べて社会経済情勢が明らかに変化しています。
平成の時代にマッチした法改正を行うことで信託がより使いやすく整えられました。
改正の背景には日本が抱える問題点である「超高齢化社会」も起因しています。



□ 「超高齢化社会」への対応


日本人の平均寿命は年々伸びており、日本人口のうち65歳以上の高齢者の占める割合は2025年で約30%(約3,600万人)になる予測です。
このうち認知症患者の予測数は日本人口の約5%です。
約5%と聞くと少ないようですが、数にすると約700万人が認知症患者と言われています。
認知症になると自分の財産管理は思うようにできなくなることが想像できます。
認知症になると一般的には本人の財産は凍結(何もできない)状態になると考えられます。

認知症などになったときの対処法として「成年後見制度」が利用されます。


□ 「超高齢化社会」に対する「成年後見制度」


成年後見制度は平成12年4月1日にスタートしました。

後見人は判断能力が低下した本人のため契約行為などをします。
認知症等により判断能力が低下した場合には、家庭裁判所に申し立てをして後見人を選任します。
制度が開始した当初は親族が後見人になることが多かったのですが、現在は弁護士や司法書士といった専門職が選任されるケースが多いです。
しかし月日の経過とともに問題点も出てきました。


□ 「成年後見制度」による問題点


成年後見制度は有用な制度ではありますが問題点もあります。
・本人の財産を減らさないことが目的のため財産を増やすためのリスクある行動は取れない
自宅の処分には家庭裁判所の許可が必要になるため簡単に売却できない
・親族が後見人になれると思っていたら家庭裁判所でまったく知らない弁護士等の専門職が選任される可能性がある
・専門職が後見人となる場合には本人の財産などに応じた報酬の支払いが生じる
・かつては想像していなかった専門職の財産の横領があった
・本人の判断能力が回復しない限りは一生涯後見制度を利用し続けることになる
後見人が本人のために最善と思われる行動を取ってくれても、それは本人の意志と違うものになっている

上記のような成年後見制度の問題点をカバーするために民事信託の活用も考えられます。



□ 特定の財産管理については「民事信託」に優位性がある


判断能力があるうちに本人の特定の財産について本人とその親族で信託契約を結ぶことにより信託が成立します。
あらかじめ親族に特定の財産の管理を任せることで、判断能力が低下して売却という契約行為ができなくなるといったことが回避できます。
信託契約に売却するタイミングを盛り込んでおけば本人の意思が判断能力低下後でもそのまま生きるものになります。


□ 民事信託で伝えられる想い


信託により成年後見制度では叶わなかった願いが実現できます。
例えば、ある時期に孫の入学資金をあげたい、子供に生活資金の援助をしてあげたいといったことも契約に盛り込めば実現可能です。
成年後見制度では贈与で本人の財産を減らす行為は取れません。
信託をすることにより本人の財産を本人の意思通りに使えるといったことが可能になります。
認知症が発症しても本人が本当はどのように使ってほしいのか分からない状態になってからではどうしようもありません。
超高齢化社会において今後ますます増えるであろう認知症。
この認知症で消えてしまいそうな本人の想いを残せる手段として民事信託が脚光を浴びているといえます。

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